カーボンニュートラル
カーボンニュートラルという言葉をニュースなどでよく耳にするようになりました。
カーボンニュートラルとは、例えば、植物由来燃料を例にとりますと、確かに燃焼によってCO2は排出されているが、植物は成長過程でCO2を吸収もしているので、ライフサイクル全体でみると大気中のCO2の実質収支はゼロになるというように気候問題や地球温暖化などを説明をする際の環境用語から由来しています。
しかし、最近では、人や企業の活動、製品についても広くカーボンニュートラル、脱炭素化と呼ばれ、むしろこちらが主流となってきています。
具体的な取り組みとしては、再生可能エネルギー(自動車メーカー各社による電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV))、バイオディーゼル燃料(例えば家庭で使用される植物由来の使用済みの天ぷら油を回収して環境負荷の少ない軽油代替燃料を再生)、カーボンリサイクル・コンクリート(環境配慮コンクリート)、ゼロカーボン・スチール(従来の石炭ではなく水素を使用して製鉄)の実用化・普及が今後ますます注目されます。
プラ資源循環促進法
6月4日、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下、プラ資源循環促進法)が、参院本会議で可決、成立しました。同法は、プラスチックごみのリサイクル量を増やすことを重視しています。
概要は、
- 製造業者などに対し努力義務として、薄型化などリサイクルしやすい製品設計を求めること(環境配慮設計)
- 市町村の分別収集や大量排出企業へ自主回収の促進すること
などです。
また、施行までに省令を定め、昨年7月からのゴミ袋有料化に続いて、使い捨てとなるストローやフォーク、スプーンなどを減らすための木材、バイオプラなどの代替素材の使用を小売店などに対し求める方針です。
②の市町村の分別回収の範囲は、洋服ハンガーなどのプラスチック製品に拡大する方針ですが、市町村にとっては大きな負担増となるため受け入れ体制の整備が急務となります。
優良認定基準改正その2
廃掃法改正(※)における優良産廃処理業者認定制度の見直しの中で、不利益処分以外では3点が改正されています。
- 事業の透明性に係る基準の審査を第三者機関である公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団が代行することができるようになりした。
従来、産廃業者は、許可の更新時などに行政へ多くの書面を提出して優良認定申請をしていました。
改正後は、従来の方法以外に、上記財団の発行する適合証明書のみで優良認定申請することもできます。
- また処分業者は、二次処分先情報の開示の可否をインターネット上に公開することが求められました。処分業者が開示不可を選択することもできるのがポイントです。
- 最後に、財務体質の健全性については基準がやや緩和され、直前各3期を基準に以下の要件を満たしていれば健全性が認められます。
各自己資本率が0%以上であること
自己資本率10%超が1期以上ある、もしくは前期営業利益金額等が黒字であること
各期の経常利益が平均で黒字であること
その他、税や社会・労働保険の滞納がないこと
※
令和2年2月25日付廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部改正
(優良産廃処理業者認定制度の見直し)
優良認定基準改正 その1
令和2年2月25日付けで廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部改正(優良産廃処理業者認定制度の見直し)が公布され、一部は同日施行され、その他は、10月1日から施行されています。改正によってどのように変わったのでしょうか。
まず今回は、すでに2月に施行されている遵法性チェックの期間について解説します。
優良認定制度は、通常の許可基準よりも厳しい基準に適合した優良な産廃処理業者を、都道府県・政令市が審査して認定する制度であり、排出事業者が産廃業者を選ぶ一つの基準にもなります。
その要件の一つとして、一般的には5年間不利益処分を受けていないとして許可の更新時に優良認定を受けます(優良認定)。しかし、その他、更新前でも優良基準に適合している旨の確認を受けることもできました(優良確認)。いずれも効果は同じで、優良となれば許可期限は既存の許可から2年間延長されます。
もっとも、後者の「優良確認」の場合は、改正前は「不利益処分を受けていないこと」のチェックについて更新後の不利益処分だけがカウントされるので、更新後にすぐに優良確認を受ければ5年間よりかなり短い期間でも不利益処分なしとして、いわば抜け穴的な使い方も可能でした。
そこで、今回の改正では、「現在の許可の期間中」か「直近の5年間」のどちらか長い方が遵法性チェックの対象期間となり、優良認定と優良認定の格差をなくしました。
(※)
平成22年度の廃棄物処理法改正に基づいて創設され、改正法の施行日である平成23年4月1日より運用開始しました(廃棄物処理法第14条第2項及び第7項並びに第14条の4第2項及び第7項)
廃掃法の施行規則の特例を定める省令(新型コロナウイルス感染対策)
廃掃法の施行規則の特例を定める省令(新型コロナウイルス感染対策)
環境省は5月15日、「新型コロナウイルス感染症に対処するための廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の特例を定める省令」(以下、特例省令)を公布しました。
背景にあるのは、新型コロナウイルスの感染拡大及び緊急事態宣言により、廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)及び同施行規則に規定される一定の期限までの報告等が困難である状況をふまえ、各種期限の延長等の特例が設けられました。特例省令の主な内容は次の通りです。
年次報告などの期限を令和2年10月末まで延長
- 多量排出事業者の廃棄物処理計画及び実績の年次報告
- 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付状況の年次報告
- 再生利用、広域的な処理及び無害化処理に係る大臣認定を受けた者が行う処理の実績報告
マニフェストに関する特例
- 運搬受託者及び処分受託者が廃棄物の処理をした際にマニフェスト交付者へのその写しの送付期限を延長(原則10日以内→30日以内)
- 電子マニフェストについて、登録の期限を延長(休日を除く3日以内→30日以内)
- マニフェスト交付者が、その写しの送付を受けないことにより産業廃棄物の処理の状況の把握などをすべき義務を負うまでの期限を延長(運搬受託者若しくは処分受託者からの写し90日→120日、最終処分終了の写し180日→240日)
【参考】
環境省−新型コロナウイルス感染症に対処するための廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の特例を定める省令について
改正フロン排出抑制法と廃棄物の適正処理
フロン排出抑制法(「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」)の法改正が4月1日から実施されています。
背景となるのは、経済産業省などの調査によりますと、これまでの規制では、直接的な罰則規定がないこともあり、フロン類が使われている業務用空調設備や冷蔵庫等から廃棄時にフロン類が回収される率は、ここ10年以上3割程度に低迷しており、環境影響のあるフロン類の排出を抑制できているとは言い難い状況でした。
今回の改正の中で、対象機器を所有するユーザーが、買い替えなどで古い機器を廃棄するという視点からポイントとなるのは以下の点です。
- 通常2つの業者に依頼をする必要があります。
- まず、必ずフロン類充塡回収業者へフロン類の回収を依頼して、業者から「引渡証明書」等の交付を受けなければなりません。
- 次に、そのコピーを添えて、対象機器の廃棄を廃棄物処理・リサイクル業者に依頼しなければなりません。
- 上記に違反した場合や、書類への虚偽記載等があった場合は、罰金刑が科せられます。
- なお、廃棄物処分業者がフロン類の充塡回収業の登録を受けている場合には、ユーザーは、1つの業者へ回収と廃棄をまとめて委託することができるメリットがあります。
特別管理産業廃棄物の電子マニフェスト義務化
2020年4月1日から事業活動に伴って年間50トン以上の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く。)を発生させる事業者は、電子マニフェストの登録及び使用が義務化されます。
ポイントは以下の通りです。
①
年度ごとに判断されます。2020年4月1日から適用となる事業所とは、前々年度にあたる2018年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く。)発生量が年間50トン 以上ある事業者です。
②
当該事業場から発生する特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く。)を委託する場合のみ電子マニフェストの使用が義務化されます。
③
義務違反者が知事の勧告に従わない場合は、公表や措置命令、及び罰則等のペナルティがあります。
排出事業者責任と現地確認
平成23年度から施行されている廃棄物処理法により排出事業者が処理の状況に関する確認を行う努力義務が規定されています(廃棄物処理法第12条第7項等)。なお許可権限を持つ都道府県条例、要綱において同様の義務等を規定しているケースもあります(岐阜県、愛知県、三重県等)。
具体的には、排出事業者は、処理委託先の事業場を直接訪問し、産業廃棄物の処理の状況を実地で確認等します。実務では現地確認ともいわれます。
ここで重要なのは、契約書やマニフェスト等の書面を管理すれば十分であり、現地確認は行わなくても罰則規定がないので特に問題はないと考えることは、将来、大きな企業リスクにつながりうるという視点です。
現地での処分に関する施設・能力の確認、設備の維持管理のための点検体制、緊急時や事故発生時の対応手順があるか等、現場担当者から説明を受けた客観的資料、会話のやりとりで感じた内容も実地確認の重要ポイントになります。
不法投棄と排出事業者責任
大阪府八尾市の農地(耕作放棄地)に産業廃棄物を大量に埋めたとして、大阪府警は1月9日、造園業者らを廃棄物処理法違反(不法投棄等)の疑いで逮捕しました。警察の捜査によりますと、本件の廃棄物の大半は解体工事から出たもので、産業廃棄物処理の許可のない下請業者、孫請業者に再々委託され、不適法に埋め立てられたことが原因です。
不法投棄をした者は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律によって重く罰せられますが〔5年以下の懲役(個人)または1,000万円以下(法人の場合3億円以下)の罰金〕、本件のような不法投棄の根本的な問題点は、排出事業者となる工事の元請企業が廃棄物の処理を安易に委託することにあります。
廃棄物処理を委託する際、排出事業者責任を果たすためには、委託先業者の選定、不法投棄に巻き込まれないコンプライアンス対策、最終的に廃棄物の処理が終わるまで確認すること等が重要ポイントとなります。次回以降、ポイントを掘り下げて行きたいと思います。
環境省 中国廃プラ輸入規制の影響調査
環境省は11月5日、外国政府による廃棄物の輸入禁止措置等に係る影響などについて、都道府県・政令市と廃棄物処理業者に対し、2019年8から9月にアンケート調査を行った結果を公表しました。今回のアンケート結果でも、一部において上限超過等の保管基準違反がみられので、今後も廃プラスチック類の不適正処理事案が発生する懸念あるといえます。http://www.env.go.jp/press/106088.html
今後、省庁が行う対策として注目されるのは事前協議制等の府県外からの産業廃棄物搬入規制を行っている自治体に対し、搬入規制の廃止、緩和または手続の合理化、迅速化を促すことです。
産業廃棄物が都道府県を超えて広域的に処理することは法律では禁じられてはいませんが、県外から産業廃棄物を持ち込む際に、条例等でその自治体独自の規制を設けています。2000年4月の地方分権一括法以降、地方自治法によって認められる国の関与は、法的には上下関係のある指導ではなくなりましたが、政府、省庁のリーダーシップに対して自治体は問題解決に向け協議・協力しあう関係であることが望まれます。